劇場(びわ湖ホール)は~大きな楽器?~ 劇場固有の音(ホールトーン)の秘密
公益財団法人びわ湖ホール 舞台技術課チーフ 押谷征仁
びわ湖ホールの大ホールは「オペラハウス」と「コンサートホール」との2つの劇場形式を可能とする設計となっております。
※オペラハウスにおいては、舞台機構を利用して巨大な舞台装置を素早く転換することが可能となります。
・舞台中の広さは、舞台前から舞台奥まで46m、舞台中両袖の幅は64m、舞台前から1階席の客席奥行きが36mとなり、主舞台は18m×18mの面積が両袖舞台と奥舞台を合わせて4面あることから、4面舞台ともいう。
建築音響については、生音を重視した設計となっておりますので、いろいろな工夫が施されております。
オペラハウスの際には、客席前がオーケストラのスペースとなります。前から4列132席を取り外してフェンスを取り付けることで、オーケストラボックスが完成します。ですので、コンサートホール形式での客席は1848席ですが、オペラの際には1716席となります。また、床が上下に移動したり、天井のプロセニアムを移動することで、オーケストラの音量を可変することが出来ます。
※コンサートホールにおいては、舞台奥にある木目の反響板が自走式にて前に移動し、客席の壁とドッキングして、完全密閉型のコンサートホールとなります。また、フロントの壁を可変させたり、シーリングの可動式反射板の昇降を行うことで、反射率を高めることが可能となります。
※客席の形状は「シューボックス型」となっております。いわゆる靴箱型。この形状は、音響特性に優れており、天井が高いことで豊かな残響が得られ、横幅が狭いことにより、壁からの反射音が得られます。
舞台で演奏される音は、直接音と間接音との音の合成により出来ております。
その間接音とは、壁からの反射音で音を増幅する働きがあります。舞台の両側壁(第一反射音の壁)が重要と言うことです。そのため、コンサートホールの際には、照明フロントの壁を閉じたり、シーリングの壁を閉じたりします。
その他、客席の壁がデコボコしている事にも理由があり、全ての客席に均等な音を分散する働きがあります。また、客席の壁や床の木の素材でも音の善し悪しが変わりますので、粗密のある堅くて音質が良いとされている、壁にはサクラ材・床にはナラ材を使用しております。
このように、専用劇場として設計されている音楽ホールは、大きな楽器と言えるのではないでしょうか。是非、劇場の「音」を体感してください!
オペラハウス・コンサートホール(大ホール)
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