公益財団法人びわ湖ホール 総務部舞台技術課チーフ 押谷 征仁
昨年6月、「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」が制定されました。これにより初めて、劇場、音楽堂等の行う活動の内容が法律に明記され、実演芸術の発展と同時に、劇場、音楽堂等が地域の活性化に一層大きな役割を果たすことが期待されています。そして、本年3月にはこの法律に基づき、文部科学大臣の「劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針」が告示されたところです。
劇場、音楽堂等の事業の活性化のためには、何よりもまず、劇場・音楽堂等における安全の確保が前提です。指針の9には、「安全管理等に関する事項」が定められ、(2)では「設置者又は運営者は、質の高い事業の実施と施設・設備の安全管理との両立を図る観点から、事業を安全に実施し得る環境を確保するための安全管理に係る規程を整備し、その設置又は運営する劇場、音楽堂等の職員に徹底するとともに、施設・設備の安全管理を適切に行い得る体制の整備に努めるものとする」とされています。
びわ湖ホールでは、舞台管理を行う前提として、事故無く安全に職務を遂行するため、「技術管理」「機器管理」「人員管理」「危機管理」を重視し、職員一人一人の職務内容を明確にすることで事故の未然防止に努めてきたところです。
法律の制定過程と並行して、びわ湖ホールも会員である「公共劇場舞台技術者連絡会」においては、「劇場等演出空間基準協議会」を通して、劇場、音楽堂等が全国的な基準に沿いつつ、それぞれ独自の規程を定めるのが妥当との考えを共通認識として活動してきました。そうしたなかで、16団体が加盟する「劇場等演出空間基準協議会」により『劇場等演出空間の運用および安全に関するガイドライン』が、6年余検討し幅広い関係者の合意によってまとめられました。
びわ湖ホールにおいても、この『ガイドライン』による運営を基本としながら、独自の劇場形態と事業運営のコンセプトに沿って「びわ湖ホール劇場技術安全管理マニュアル」を作成しました。
びわ湖ホールは本年、開館15周年を迎えますが、このマニュアルを基本に技術運営を行い、安全で創造性豊かな演出空間を確保し、更なる充実発展を期す考えです。