舞台機構の耐震対策(安全対策グッズ)
いわき芸術文化交流館ALIOS 施設管理課 舞台担当 田中夏子
2011年の震災後、新たな耐震対策を取り入れられた劇場は多いことと思います。
落下防止や転倒防止には大小さまざまなものがありますが、何十トンもある反射板などは劇場の中でも揺れたときの被害が大きなものでもあります。
そのような舞台機構に対する耐震対策の一例を、震災時には震度6弱を経験したいわき芸術文化交流館アリオスからご紹介したいと思います。
当館の大ホールでは、反射板(天井反射板、正面反射板、側面反射板)がワイヤー巻上げ式で幕形式のときは吊り上げて格納しています。
ですので、反射板を組んでいるときと格納しているときと、両方の耐震対策が必要になります。
では実際にどのような対策を取っているかと言いますと…、
拡大してみると・・
この写真は、反射板を使用しているときの揺れを最小限に抑えるため、反射板を組んだあとの天井反射板とプロセニアムとの間に衝撃吸収材を挟み込んでいます。
使用している衝撃吸収材は、「ソルボ」です。(三進興産株式会社)
ソルボはエーテル系ポリウレタンで、外圧を受けると素早く変形し、ゆっくりと元の形に復元することで衝撃を吸収し、さらに高い粘弾効果によって圧力を均一に分散します。
この製品は、ゴムやEVAなどこれまでの素材に比べてへたりが少なく、耐久性に優れています。
上手側と下手側にも取りつけておりますが、ソルボを反射板自体に取り付けているところもあります。
この写真は、躯体側にもソルボを取りつけて天井反射板格納時の耐震対策をしています。
客席から見切れるところは反射板と同じ色のカバーをソルボに掛けています。
このように、反射板の見えない部分の耐震対策をご紹介しましたが、反射板が組み上がると客席からの写真の通り、ほぼ気付かれることはありません。
ソルボはそれほどの量がなくとも威力を発揮するので、場所も重さも大きく取らずに済みます。
東日本大震災後の地震に関していうならば、たびたび起こっていますが今のところ反射板に大きな損傷はありません。
ソルボはその他の舞台機構にも使用していますが、重量物と躯体とが接する個所などには有効な耐震対策になるかと思われます。
耐震対策をご検討の皆様、いわき芸術文化交流館アリオスの取り組みを参考にしてみてください。